中国語辞典レビュー:第一回『中日辞典』小学館
はじめに:
筆者は中国語学習歴4年のいわゆる初学者であり、ここに挙げる内容はあくまで個人的な感想であり必ずしも正確ではないことをご理解願います。
「中国語辞典は何がおススメ?」と聞かれたらとりあえず挙がるのが小学館の中日辞典であろう。
本書は商務印書館との共同編集で、内容も網羅的であり、とりあえず持っておいて損はない辞書といわれる。
初版では以下のような特徴がある(★はすべての版に見られるもの)
- ★ピンインのアルファベット順
- 見出し字は異体字・多音字含め約13000、見出し語は約85000
- 各アルファベット音の初めに手指字母が描かれている
- “步”、“请”など一部の見出し字にのみ総画数が与えられている
- おそらく重要語でありかつ日本の漢字と似ているが画数が違う場合のみ
- ★重要語は星印で重要度ごとにマークされている
- 各音節ごとに同音字早引きコーナーがある
- 見出し字にGBコード番号、中国電信コード番号を表記
- 表紙裏の地図は北京、上海、天津と北京周辺、中国の全体がある
- 文化に関する知識はコラムでなく見出し語の解説として載せてある
- たとえば“语言游戏”(言葉遊び)は“语”の項にある
- “★请假条”(休暇願い)などでは実際の例が挙げられている
- 大陸の標準字形に準じておりかつ重要語彙を優先しており 、“䗩”など載っていない字もある
- ★医学などの学術用語の記載がある
第2版では初版との変更点として以下の点が挙げられる
- 見出し字は約13500、見出し語は約100000に増加
- 手指字母表記の廃止
- すべての見出し字に総画数の表記
- 重要語や解説に赤字が使われている
- 同音字早引きはyiなど一部の字音のみ
- おそらく一定以上の同音字をもつ場合のみ
- GBコード番号、中国電信コード番号表記の廃止
- 表紙裏の地図は中国全体のみ
- コラムの大幅な増加
- 巻末付録の追加
- プチ日中辞典の追加
第3版の場合、第2版との変更点は
- 見出し字は約14000、見出し語は約100000に増加
- 同音字早引きの廃止
- 囲み記事、特に動作動詞、類義語に関するコラムの大幅な増加
- 巻末付録の大幅な増加
- 第2版でコラムだったものの一部がこちらに移動している
- プチ日中辞典の廃止
- 『通用規範漢字表』に基づいて一部の見出し字は一級~三級の表示がある
- 品詞の表示対象が名詞、形容詞、動詞にも拡大
などが挙げられる。
小学館の中日辞典では一部の項では類義語との比較解説が行われているほか、全体的に文法などに関する解説が多く、また文化などに関するコラムも豊富で、学習辞典としての使用に最も効果を発揮するといえる。同じような学習者向け辞典も多いが、本書は見出し語も非常に多く一般辞書としても使い勝手がいい。重要語の項では例文が書かれており、使い方を知るにも便利である。なお日中辞典としての使用は第2版しかできず、その規模も非常に小さいので、必要であれば同社の『日中辞典』などを別に用意するのが無難であろう。
(※筆者は編集時点で日中辞典を一冊も持っていません。)
中国語辞典は多くの場合字書としての性格も持つことが多いが、本書はその性格が特に強い。とはいえ、当たり前ではあるが、本格的な字書には到底敵わない。
全体的にあくまで標準語辞典としての性格が強く、異体字への対応力には難がある。また方言的な言い回しにはほとんど歯が立たない(例えば“粥”に対応する動詞は“喝”しか書かれていないなど)ため注意が必要。
なお、時代の変化に伴う収録語の増減が少なからずあるため(例えば“刘”の項を見ると“刘寄奴”は初版にのみ収録されている)、一定以上の中国語レベルの方にはすべての版の併用をお勧めする。
総じて、標準的な現代中国語を学ぶ上では非常に使い勝手のいい辞書であるといえる。
............個人的には、中国語の試験などで辞書の持ち込みが許可されている場合にはとりあえず持っていくべき辞書の一つだと思う。
次回は 《成语通检词典》中华书局 の予定です。