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中国語辞典レビュー:第十回《现代华语词典》中图上海书局

はじめに:

筆者は中国語学習歴4年のいわゆる初学者であり、ここに挙げる内容はあくまで個人的な感想であり必ずしも正確ではないことをご理解願います。

 

基本的に中国語学習で使われる辞典は共通語である普通話を対象としているが、海外の華語を対象とする辞典も少数ながら存在する。

《现代华语词典》中图上海书局

本書は華語を対象とする中型辞典である。
項目数は約5万項目で、規模自体は普通といったところ。
方言語彙なども収録しているとするが、どの地点の方言かは明記されていない。


“两回事”の項には“指彼此无关的两种事物:广州方言的‘走‘,意思是’跑‘,跟普通话的’走‘是〜”という説明があったりして、細かく見ていくと意外に面白い。

 

鈚pi1などの項を見ると◻︎×という記号が見られる。これは現代では常用されていないという表示。諸君のような辞書コレクターにはあまり意味のない表示かもしれない。

 

ここまでは一般的な中国語辞典と大差ないが、本書の華語辞典としての本領は以下のような記述にある。


霹雳pi1li4の項には「マレー半島西海岸北部の州名」という通常では見られない記述が見られ、後にはマレー語表記[马 Perak]が書かれている。吉隆坡ji2long2po1“Kuala Lumpur”のような大都市名であれば国内の辞書でも確認できるが、Perakや Kuchingなどの多少細かい名前を地名辞典を使わずにある程度まで対応できる。


さらに、打油da3you4「給油」,黄梨huang2li2「パイナップル」などといった、シンガポールやマレーシアの華語である、いわゆる新馬華語に見られる特有の語彙を収録している。とはいえその語が新馬華語であるという注記などはないため、その語を見ても分からないのが注意。

 

難点として、あくまで華語を対象とした中型辞典のため、一般的な中国語の検索にはあまり向かない。しかも例文が少ないので学習にも向いていない。網羅性も高くないので、同様の用途なら《全球华语词典》の方が使い勝手がいいだろう。

 

総じて、普通話や他の方言をすでに学んだ者がシンガポールなどの華語を始めるのにはそこそこよく、読むのも面白いが、国内での中国語学習には全く無意味である。

 

次回は愛知大学中日大辞典編纂処編『中日大辞典』大修館書店 をお送りする予定です。