大学新入生向け「中国語辞典のススメ」
はじめに:
筆者は中国語学習歴4年のいわゆる初学者であり、ここに挙げる内容はあくまで個人的な感想であり必ずしも正確ではないことをご理解願います。
(アプリ版の有無については筆者が実際に使用している場合にのみ挙げています。)
現在「中国語辞典」と呼ばれる辞典は非常に多く存在し、中国語学習者にとって、どの辞書を選べばいいのかは常に悩みの種。
そこで今回は、4月から大学で初めて中国語を学ぶ方向けに
1.紙の辞書
2.オンライン辞書
について紹介する。
特に紙の辞書については
(1).二外向け
(2).中国語専攻向け
の観点からいくつかおススメの辞書を紹介していく。
1.紙の辞書
(1).二外向け
大学での第二外国語はたいていは二年程度。たった二年のために高い辞書や重い辞書は買いたくないという方も多いだろう。
1.『クラウン中日辞典 小型版』三省堂
ある程度安く、ある程度軽く、そしてある程度扱いやすく、とりあえず二年間使えればなんでもいいという人も多い。
本書は定価3080円(税込)とそこそこ安価で小さく、気軽に持ち歩くことができる。
発音のところにはカタカナでの音注があり初心者にもやさしく、内容も簡便で無駄がなく扱いやすい。最後には日中辞典もついており、二年間の二外程度なら十分耐えられるだろう。
2.『最新実用中国語辞典』隆美出版
二外で中国語を選ぶ方の中には「ビジネスで使える」や「需要がある」という理由で選ぶ人も多いだろう。
本書は定価5000円近くするためあまり安いとは言えないが、ビジネス面での活用を狙う方にはそれなりに相性がいい。
巻末付録で大手メーカーの中国語名やパソコン用語の中国語訳などが集められている。出版が約20年まえのため情報の古さが少し気になるが、メーカー名などは今でも十分通用する。
通常の辞書としての機能も十分であり、ハンドブックとしての使用に適しているといえる。
参考:
(2)中国語専攻向け
外国語学部や文学部など、なんらかの形で大学4年間、中国語を専門にする方向けの辞書。大きめの辞書や高めの辞書が多く、適当に買うには少し勇気がいる。
1.『中日辞典』小学館
国内の中国語辞典のうち、特に大型のものは文法事項などの説明をある程度含んだいわゆる「学習辞典」としての機能を持つものが多い。
本書は中国語経験者に「中国語辞典は何がいい?」と聞いたら大体でてくるほどの良書。文法事項や類義語解説、また文化コラムなどの情報が豊富で、収録語数も多く非常に汎用性が高い。基本的に最新版である第3版さえ持っておけば最初の2,3年は耐え抜くことができよう。初版、第2版は内容が若干違っているが、興味がある方だけが買えばいいのではないだろうか。
参考:
2.『東方中国語辞典』東方書店
せっかく中国語を4年間学ぶのだからそれなりに本気で取り組みたいと思う方も多いはず。
本書は小学館のものに比べて一般辞書としての規模は劣るものの学習辞典としての機能はそれを凌駕している。
なによりも、類義語の解説が飛びぬけて多い。また文法事項の解説もかなり丁寧であり、収録されている例文もずば抜けている。
参考:
3.『中日大辞典』大修館
とにかくすべてを網羅した辞書が欲しいという欲張りさんも中にはいるのではないだろうか。
本書は東方書店、小学館のものに比べて学習辞典としての機能は劣るものの収録語数が非常に多い。方言への対応力もかなり高く、汎用性がかなり高い。
4.『現代漢語詞典』商務印書館
以上のように国内だけでも中国語辞典は数多くあるが、当然中国にも中国語辞典はある。
本書はいわゆる「中中辞典」である。この現代漢語詞典、通称「現漢」は現代中国語の規範的辞書とも呼ばれるもので、現在までに第7版まで出ている。中国語がある程度読めるようになったら、本書があればとりあえず何とかなるレベル。中国語を本気で学ぶのであればどこかのタイミングで必ず一冊は欲しいところ。
とはいうものの、版ごとの差が意外と大きく、読む文章の時代ごとに複数の版を使いわけるといったテクニックも持っておくと便利かもしれない。
5.『新華字典』商務印書館
漢字を使う中国語にも当然、漢字の「字典」はある。
本書はかなり規模の小さい字典であるが規範的な字義を載せており情報も正確かつ豊富で学習するうえで必携ともいえるほど。とくに中級以降、辞書に載っていない語を理解するのに字義の解釈が求められることが増え、そのさいに重宝する。シンプルな体裁で学習者向けであり、サイズも小さいので持ち運びにも便利。
アプリ版もある。
6.『中国語発音字典』東方書店
外国語を学ぶうえでほぼ確実に当たる壁といえばリスニング。
本書は発音ごとに漢字を配列する「だけ」という非常にシンプルな字典。そんなもの必要ないと思うかもしれないが、同音字を把握するのに非常に都合がよく、またリスニングで聞こえてきた音から直接検索するのにかなり都合がいい。
この点で見ると上に挙げた中国語辞典は、いずれも発音ごとに見出し語を配置し、その字が首字となっている語を列挙するという形をとっており、検索が二度手間なのである。
なおこの場では紹介しないが、中国語辞典の中には完全に発音順で並べている辞典も少数ながら存在する。
参考:
以上が「紙の辞書」である。
2.オンライン辞書
「オンラインの辞書なんて信用できるのか」と疑問に思う方も多いだろうが、結論から言えば、意外と信用できる。
1.Weblio中国語辞典
オンライン中国語辞典の定番中の定番。中国語検索、日本語検索のほかに発音検索にも対応し、例文も非常に豊富。紙の辞書を買わないでもWeblioだけて4年間を乗り切るものがたまにいるほどには使える。白水社の中国語辞典をもとに構成されており、信頼性もそれなりに高い。
2.北辞郎
有志の編集でありながら29万語以上(2023/04/04時点)を擁する。ネット用語や最新の造語など通常の辞書に載ってないような語彙を特に得意としており、Weblioの弱点をきれいに補っている。記述が有志の者である以上無条件で受け入れるわけにはいかないものが入っている可能性もあるが、普通に辞書として使うには十分であろう。
アプリ版もある。
3.Pleco Chinese Dictionary
いわゆる中英辞典。もう英語はこりごりという方も多いかもしれないが、日中中日で見られない記述があったりするので、意外と重宝する。さらにこのアプリは広東語、フランス語、ドイツ語に対応した辞典もあるほか、購入すればオックスフォードやロングマンの中国語辞典、現代漢語規範詞典、現代漢語大詞典、漢語大詞典、古漢語大詞典、軍事用語辞典まで入っているという気合の入れようである。無料のものだけでも、英中中英、仏中中仏、広東語、仏教用語、医療用語などは使える。
このアプリでは、複数の辞書を同時並行で検索にかけることができるので、うまく使えれば相当有用になるはず。
このほかに中国語学習に役立つものには成語辞典、俗語辞典、文法用例辞典、漢和字典、文学鑑賞辞典、用語辞典、など工具書と呼ばれるような特殊な辞典や字典が数多く存在する。今後の中国語人生の中で自分のお気に入りの辞書を見つけてみるのもいいかもしれない。