中国語辞典レビュー:第九回 『白水社中国語辞典』白水社
はじめに:
筆者は中国語学習歴4年のいわゆる初学者であり、ここに挙げる内容はあくまで個人的な感想であり必ずしも正確ではないことをご理解願います。
学習辞典としてのものや字典に近い中国語辞典などが乱立する中、日本には一際能力の突出した辞書が存在する。
初級者から上級者まで様々なレベル帯の人がお世話になるであろうオンライン中国語辞典『Weblio中国語辞典』。その礎となった名辞典こそが本書である。
まず、参考文献の数が大変に多い。小学館、大修館、東方書店など主だった中国語辞典では参考文献は書かれていないものの、その多くは《现代汉语词典》を基準点として作成しているとされる。
本書では冒頭で主要な参考文献が示されているが、そこでは国内の中国語辞典である大修館、岩波書店、角川書店、講談社、光生館、小学館など名著と呼べる辞典が並んでいる。
中国の辞典も示されており、成語詞典、八百詞、方言詞典、各種用法詞典が並んでおり、その数は34にもなる。
なお、文法書としては朱徳煕《语法讲义》が名を連ねている。
親字見出しは約11000、全見出し総計は約110000と数だけで言えば小学館第三版を超えている。各語ごとの説明がかなり詳細で例文もかなり多く、用例を探す目的で使用することも可能だろう。
本書にはコラムがなく、学習辞典としての機能は弱いものの、中国語の網羅的な記述に特化している。
巻末の付録には、世界の国・地域と首都や化学元素、度量衡、親族呼称、のほかに、軍隊階級、専門職名、公務員の等級など他の辞典ではなかなか見かけないものが並べられている。
度量衡では容積、重さなど東方書店などでもみられるものが並んでいる一方、10^24や10^-24など他の辞典ではそもそも載せられていないようなものまで並んでいる。
親族呼称には、日本語の「父」に対して中国語間接呼称“父亲“、直接呼称”爸爸“、謙称”家父、家严“、尊称”令尊、尊公“というように様々なバリエーションが載せられている。「亡き父」など調べるのに一苦労する語も載っている。同様の記述は小学館第三版にも見られるが、本書に載っている数は小学館のそれを凌駕している。
軍隊階級表を載せている一般中国語辞典は筆者が知る限り本書のみである。とはいえ使うような機会もそう多くないと思いたい。
専門職名は大学教員、高校教員などのほか、統計要員、経理要員、スポーツコーチなどちょうど痒いところに手が届くような語が並んでいる。
公務員等級は上述の軍隊階級表と併せつつ、共産党、国務院、地方政府の階級が比較されている。
本書の弱みは前述のようにコラムや文法解説の少なさにある。また、構成が淡白で面白みに欠けるところがある。その代わり、付録を含め非常に広範な領域の語を収録しており、網羅性が高い。
総じて、初学者にはあまりお勧めできないが、中上級者が使うことで真価を発揮する辞典なのだろう。
...筆者は学部時代の先生に勧められて古書店で何とか手に入れたが、本書はすでに絶版となっているためかなり高額となっている。
次回は《现代华语词典 修订版》中图上海书局 をお送りする予定です。