permissioncode嘅記事簿

https://twitter.com/permissioncode3

中国語辞典レビュー:第七回 石山福治編『最新支那語大辞典』

はじめに:

筆者は中国語学習歴4年のいわゆる初学者であり、ここに挙げる内容はあくまで個人的な感想であり必ずしも正確ではないことをご理解願います。

 

 

 

辞書は最新のものを買えとよく言うが、古いものにも味はある。

石山福治編『最新支那語大辞典』

本書は昭和18年改版で、戦中に出版された辞書である。

 

本書では索引で中華民国によるアルファベットでの検索は可能だが、声調の区別がされっておらず、本文は漢字字典のように羅列されているため、現代の辞書に慣れた者には非常に扱いづらい。

 

本文における声調表記も平上去入のいわゆる四声で表記され、漢語普通話の4声とは若干異なる。

 

本書は通常の辞書として扱うのではなく、言語資料の一種として扱うのがよいだろう。

 

編纂が昭和10年初版で、序文によれば語彙収集自体は大正期から行われたようで、20世紀前半の語彙に触れるにはちょうど良い。例えば“跳灶王”など、一般の中日辞典ではなかなか見かけないような習俗的な語彙もみられる。

 

後半には付録として日支字音対照表、支満字音対照表がある。

 

日支字音対照表では日本漢字音をアルファベットで表記し、それと対照させながら中国漢字音を当てている。

 

例えば、日本漢字音のgenにはchien,hsüen,hsien,yen,huan,yüan(ピンインでは順にjian,xuan,xian,yan,huan,yuan)が対応すると表記される。ある程度のレベルの方にとっては当たり前の知識ではあるが、表にされて分かりやすくなっているという点ではありがたい。

 

支満字音対照表では、中国北方音と満州での音を対照させている。例えばch'iang(qinag,强,腔など)は満州ではkiangに対応するといった具合である。現代ではなかなか使い道がないのかもしれないが、方言音資料の一部として使えなくもないだろう。

 

......とはいうものの、満州における音声研究はそれなりに行われているため、資料的な価値は既に薄い。

 

 

総じて、古い語彙を探すのには悪くないが、現代で一般辞書として用いるには扱いづらく、ほぼ役に立たないだろう。

 

 

次回は『実用最新中国語最新辞典』隆美出版 の予定です。