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中国語辞典レビュー:第三回『岩波中国語辞典 簡体字版』岩波書店

はじめに:

筆者は中国語学習歴4年のいわゆる初学者であり、ここに挙げる内容はあくまで個人的な感想であり必ずしも正確ではないことをご理解願います。

 

※本記事では声調を数字で表記しています。

 

 

中国語を学ぶのにほぼ必ずと言っていいほど学ぶのがピンインであろう。

『岩波 中国語辞典 簡体字版』岩波書店

1963年初版(簡体字版は1990年)とかなり古い。序説に「中国には、すべて52の民族があって」と書いてあるほどである(2023年現在では56民族)。

 

本書では見出し語としてピンインアルファベット順を採用しているが、見出し字がない。つまりは完全に発音のみで並べている。たとえば、shan1ge1“山歌”の次にshang1e2“上颚”が並んでいるといった具合である。見た目では英語辞典に近い。

 

この方法は、小学館東方書店などの辞書を愛用している方には違和感があるかもしれないが、発音で直接検索できる分慣れるとかなり早く調べることができるという利点がある。この方式は『標準中国語辞典』白帝社でも採用されている。

 

用例にはその一々にピンインが書かれており、とても見やすい。

 

また本書では文字を持たない語であるliang1「なぐる(侠客風の言い方)」などを収録している。

 

上の例を見て、ある程度中国語に慣れた方ならわかると思うが、本書では現在他の辞書では載せていない音節を持つ語が載っている。

 

試みに、中国の規範的字典の一つである新華字典と比べてみると

*ra,*no,tei,*cei,*sei,★bia,★pia,★biang,★piang,★diang,★tiang,lüan,lün

の音節が確認できる。

※*はある語の別の発音(一定の状況下での発音あるいは方言発音(おそらく北京方言))、★は擬音語のみ

 

逆に、dia3“嗲”は載っていない。

 

これは現場で得られたデータをそのまま辞書化したことで起こったらしく、ある意味で実践的な発音のようだ。

 

このほかに本書ならではの特徴として一部の語彙に方言あるいは専門用語にマークを付け、ランク付けをしている。

  • 古典のなかのことばが、たまたま耳で聞くことばの中に引用されて現れるもの
  • 古典のなかのことばではあるが、耳で聞くことばの中に混用されているもの
  • 学術その他の専門の言葉で、一般には広く使用されていないもの
  • 文学作品などに現れることば
  • ラジオ・テレビ・講演などで話されることば
  • きわめて普通なことば(マークなし)
  • ややくだけた言いかた(いわゆる北京語)
  • 北京の下町のことばスラングなど
  • 特殊な社会で使用される仲間ことば、隠語など
  • 他人にたいする悪口のことば
  • 北京以外の方言から流入して、いちおうは北京でおこなわれていることば

以上11の区分を行っている。これは他の辞書では中々見られないものである。

 

さらに巻末には意味による索引が用意されている。全146種の意味が用意されており、たとえば「軍事」の項からニトログリセリンとその発音mian2hua1yao4を見つけ、“棉花药”にたどり着くことができる。

検索先は日本語とピンインが書かれ、中国語が書かれていないため少し見にくい。

 

(なお、調べてみるとニトログリセリンは“棉花药”ではなく“硝酸甘油”である。"棉火药"のことを言っているのかもしれないが、いずれにせよ、精度には不安がある。)

 

 

以上のように、見出し語の並べ方や収録している語の性質からして非常に実践的な使用を想定した辞書といえる。

 

総じて、一昔前の文学を読むのためにそばに置いておく分には問題ないが、これから標準中国語を学ぼうという初級~中級者には基本的におススメできない。

 

 

 

.....................個人的には、授業で出てくる一昔前の文学作品を読むのにとてもお世話になった。

 

 

次回は《现代汉语八百词》商务印书馆の予定です